アジアの社会主義国である中国とベトナムでは、計画経済体制から市場経済体制への移行を模索する動きが加速化する中で、高等教育の分野において種々の改革が推進されてきた。これまで無償であった高等教育が有償となったことは象徴的である。加えて、両国とも更なる高等教育の拡張策がとられている。その結果、社会主義体制の規制から従来かえりみられなかった非公立ないし民間活力の利用に着目し、これを奨励する方向に動いてきた。本研究では、こうした中越両国の高等教育改革全体の中での高等教育民営化政策の位置づけを分析し、非公立高等教育機関の運営実態を明らかにするため、今年度は以下の手順で研究を進めてきた。 (1)既に収集済みの『人民日報』、『光明日報』、『中国教育報』、『中国高等教育』、『教育研究』、『Vietnam News』、『Phat trien Giao duc』など、中国およびベトナムで発行される新聞および教育専門誌の中から高等教育の民営化に関わる論文、論説、記事を網羅的に収集、翻訳し、整理・分類した。 (2)関係文献・資料を広島大学教育研究センター、アジア経済研究所、国際協力事業団国際協力総合研修所で収集した。 (3)本研究課題に関して中国・ベトナム両国内で最も先進的な研究活動を展開している北京大学高等教育研究所、上海市高等教育研究所ならびにベトナム国家教育開発研究所等を1999年9月9日〜27日に訪問調査し、各機関の専門家の前で研究成果の一部を報告し意見交換を行った。 (4)近年の高等教育民営化の動き、とくに中国では民営大学と呼ばれ、ベトナムでは民立大学と呼ばれている非公立高等教育機関に対する政策の変遷を明らかにし、後掲の各論考として公表するとともに、今年度の研究成果をとりまとめ、2000年3月23日に開催された東北大学教育学部附属大学教育開放センター研究集会において「中越両国における高等教育の変容:民営化方式の有効性と影響」と題する報告を行った。
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