アジアの社会主義国である中国とベトナムでは、計画経済体制から市場経済体制への移行を模索する動きが加速化する中で、高等教育の分野において種々の改革が推進されてきた。これまで無償であった高等教育が有償となったことは象徴的である。加えて、両国とも更なる高等教育の拡張策がとられている。その結果、社会主義体制の規制から従来かえりみられなかった非公立ないし民間活力の利用に着目し、これを奨励する方向に動いてきた。本研究では、こうした中越両国の高等教育改革全体の中での高等教育民営化政策の位置づけを分析し、非公立高等教育機関の運営実態を明らかにするため、今年度は以下の手順で研究を進めてきた。 1.昨年度に引き続き、既に収集済みの『人民日報』、『光明日報』、『中国教育報』、『中国高等教育』、『教育研究』、『Vietnam News』、『Phat trien Giao duc』など、中国およびベトナムで発行される新聞および教育専門誌の中から高等教育の民営化に関わる論文、論説、記事を網羅的に収集、翻訳し、整理・分類した。 2.関係文献・資料を広島大学高等教育研究開発センター、国立教育研究所等で収集した。 3.昨年度実施の中国およびベトナム調査を踏まえ、今年度は関連情報の乏しいベトナムについて集中的に調査を行うため、2001年10月1日〜7日にホーチミン市、ハノイ市を訪れ、ベトナム国家教育開発研究所ならびに、ヴァンヒエン大学、フンヴオン大学、トンドクタン大学、ホンバン大学、ハノイ経営管理大学、ドンドー大学の各民立大学を訪問調査した。国家教育開発研究所の専門家の前で昨年度までの研究成果の一部を報告するとともに、関連情報・資料の収集と意見交換を行った。各民立大学では、経営および政府との関係を中心に学長、教務責任者を初めとする関係者に対するインタビュー調査を行った。 4.本年度の調査研究の成果は、別掲の研究成果の中に部分的に採り入れた。加えて、2001年12月21日に東北大学教育学部附属大学教育開放センター研究集会において、「移行経済期における非公立高等教育機関」と題する報告を行い、主として中国の民営大学、ベトナムの民立大学に対する政府の支援や関与について論じた。
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