研究概要 |
米国における1980年代以降の教育分権化政策のもとで、学区教育委員会のアカウンタピリティ・システムが、各学校の自己評価体制を確立することによって体系的に整備されつつある改革動向を、シカゴ、ニューヨーク市、ロサンゼルスの3つの大都市学区について比較検討することを通じて、以下の3点について分析解明した。 1.大都市学区の分権化政策により設置された学校協議会が、今日では基礎学力の向上を中心にした学校目標を達成するための自己評価活動組織に再編されつつある動向を明らかにすることができた。各学校の自己評価委員会(Chicago : Local Scool Council, New York City : School Leadership Team, Los Angeles : School Site Council)の編成、職務権限、年間評価活動状況などを観察と面接調査によって明らかにした。特に、学校改善計画(School Improvement Plan, Comprehensive Educational Plan, Site Action Plan)に基づくプログラム・アカウンタビリティ・システムの有効性について検証できた。 2.学区および州レベルのアカウンタビリティ・システムとして、主に、学校評定基準(全米標準テスト成績、日平均出席率、高校の修了率など)と、達成不十分な困難校に対するintervention(指導・支援)体制、すなわちシカゴ学区のre-engineering、ニューヨーク州のSURR(Schools Under Registration Review)、カリフォルニア州のII/USP(Intermediate Intervention/Underperforming Schools Program)について解明することができた。 3.学校協議会-学区教育委員会-州教育委員会のいわば教育政府間関係が、学校評価政策を通して飛躍的に強まってきている.教育統治・行政-教育実践-評価・アカウンタビリティは連続した過程としてとらえられねばならない。そして、いずれの過程においても、自由・選択、平等・公正、効率・能率さらには公教育の質といった4つの教育価値をどのような内容として追求するかが厳しく問われていることが明らかとなった。
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