今年度は、日本の戦後の高校の学習指導要領の変遷を調べる作業と、日本における高校と大学の接続を巡る現状をいくつかの個別大学に即して把握をする作業と、ドイツにおける高校と大学の接続をめぐる問題についての調査を行った。ドイツにおける高校と大学の接続に関しては、1999年11月27日に日本大学文理学部で開催されたドイツ教育研究会において、「ドイツにおける高校と大学の接続問題」について口頭発表を行った。また、研究の一部を、週間教育資料の3月20日号と3月27日号にそれぞれ、「高校から見た大学との接続関係--ドイツ」「アンケートに見るドイツの大学と高校の接続問題」として公表した。 現在までに、明らかになったこととしては、たとえば、以下の諸点があげられる。(1)ドイツの場合、大学への適応に関しては、年齢が若い方が、選択できる科目が多いほうが、高校の成績がよいほうが、大学についての情報があるほうが、適応しやすい。(2)ドイツの大学生の知識が欠けている領域としては、数学、コンピュータ、物理があげられ、国語(ドイツ語)力、実験能力、歴史的知識などはあまり欠けているとは考えられない。 (3)ドイツの大卒者に不足している能力としては、コミュニケーション能力、実習・職業経験、専門を越えた思考、などがあげられる。 こうした点を見ると、大学と高校の接続を考える場合に、大学卒業生が社会において必要とされている資質の問題も視野に入れた上で、言い換えれば、専門教育のみならず、コミュニケーション能力、専門を越えた思考力などを形成する目的に照らして、高校と大学のカリキュラム上の接続を考えていく必要があることがわかった。この点を踏まえた上でさらなる研究を展開したい。
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