コミュニケーションモードの評価と話しことばの習得状態について言語習得途上のろうの幼児のビデオ分析の結果から見ると、コミュニケーションモードは、2〜4歳の模倣期では相手の使用しているモードにあわせて使用し始め、常に使用する状況が続いた。小学生時期になると相手と場所に応じてコミュニケーションモードを使い分けるようになることがわかった。また、話しことばの習得には、話しことばの特徴的な周波数帯域の補償が不可欠であり、この領域が人工内耳等により補償される始めると、発話量が増加し、表出できる音素が増えてきた。また、音声再生やイントネーションを伴った発話も有意に増加することがわかった。さらにこうした、発話行動は、手指の併用によって妨げられるものではなく、話しことばのシステムが確立していない時には、手指により意味概念の伝達がなされ、相互補完的に作用しているものと思われた。しかし、この結果は、本来の1/3しか機能していない人工内耳を使用している幼児でのデータでの結果であり、全てが機能している人工内耳装用児の場合には、更に聴覚フィドバック系の確立が促進され、次第にその子にとって確実にフィードバックできるモードへと移行していくことが観察された。このことは、最重度の子供達の場合、意味概念の習得が先行することの必要性と話しことばへのシステムへの移行には、十分な聴覚フィードバックの可能な補聴システム(周波数圧縮変換型補聴器の適用やFM補聴器のフィッティングにおけるイコールゲインの考え方の導入など)が必要性を示唆していると考えられた。今後、コミュニケーションストラテジーの変化を加えて更に実証していく必要がある。
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