研究概要 |
聴力レベル100dB以上の最重度聴覚障害児を対象にして以下の点について検討を加えた。1)コミュニケーションモードは、対象とした全ての子が幼少期から手指を併用したトータルコミュニケーションで教育を受けていた。2)意味ネットワークの拡充は、手指を利用しても必ずしも十分ではなかった。3)話しことばの習得状態:補聴器装用よりも人工内耳装用による方が、話しことばの明瞭さは、プロソディ(特に、イントネーション、声の質、方言的いい回し、エンファシス)で著しく改善した。その結果、音韻も明瞭になってくることがわかった。しかし、聴覚が活用されていない子供たちの場合、キューサインを全ての受容、発話に併用し、キュードスピーチのコミュニケーションモードで会話をしていて発話の明瞭度が改善しなかった1名に、キューを制限し聴覚情報を重視した試みを1年にわたって行った結果、発話面およびプロソディ面での著しい効果が得られた。4)聴覚学習への影響:従来型の補聴器装置では低域での装置閾値は40〜60dBで、高音域はさらに悪く、聴覚のみの条件では環境音の受聴能力や単語の聴取能力が50%以下であった子供たちが人工内耳に切り替えた場合、全周波数帯域で30〜40dBの装用域値を得ることができた。これにより環境音の受聴能力および単語の聴取能力は著しく改善された。高域の周波数圧縮変換型補聴器によった場合には、環境音の聴取能力の向上が認められたが、単語の聴取への効果としては音響的特徴をとらえることはできたが、個々の識別まではできなかった。以上の結果から、コミュニケーションモードによって以下のように聴能の発達に影響を及ぼすことが明らかである。2,教育側が意図に取り組まなければ、コミュニケーションモードと聴覚は互いに拮抗関係にある。3,両方を積極的に使った場合、手指のみならず聴覚も十分に改善され得る可能性が高い。4,幼少児期からの併用が望ましい。
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