80年代以降、ME化の進展に伴って、生産設備の自動化・ロボット化が進み、プログラミング作業の重要性が高まるとともに、工程間の直結化・連続化の可能性が拡がり、保守保全作業の比重が高まった。ME化は、全労働者中に占める保守保全マンの比率を高めたと同時に、従来の電気、機械に関する知識以外にコンピュータ制御や電子に関する科学的知識や経験を必要としたのである。80年代に入ると、こうした労働力を求めて、自動車産業、電機産業では高卒を基礎資格とする労働省認定の企業内職業能力開発短期大学校(以下、企業内能開短大という)を設立し、テクニシャン養成を始める。 企業内能開短大で養成される能力はいかなるものであろうか。S自動車、P自動車の両者に差異は見られなかった。そこでは、テクニシャンに必要な能力分野は機械系を中心として電気・電子系、情報処理系をも含む幅広い技術的知識が要求されていることを示しているとともに、自動化の進んだ生産設備のメンテナンスにとって機械、電気・電子、情報という三位一体化した教育内容は必要不可欠なのである。 企業内能開短大卒業生の職場配置及び処遇を含めた位置付けはS自動車とP自動車とは必ずしも同じではなかった。P自動車では技術職としての職務に従事しているとともに、処遇上も短大扱いを受けている。職場配置は4分の3が生産技術部門に配属されるが、他方、工場部門に配属されたとしてもあくまでも技術スタッフとしての職務や仕事なのであって、いわゆるライン業務ではない。一方、S自動車では配属先として最も多いのが生産部門(53%)、次いで研究開発部門(16%)、生産技術部門(8%)と続く。P自動車と対照的であるかにみえるが、生産部門に配属されたとしても、電子技術、機械の制御技術等に関する高度な知識を要求される改善班に所属しているのである。
|