研究概要 |
(1)ロシアの公民教育の再編状況を把握するため、ロシア史教科書の分析を現在進めている。その中で、ソ連崩壊後のロシア史教育で最も大きな課題は、教科書は「だれ」に向けて書かれるべきか、の問題であることが明らかとなった。-3つの教科書の方向性が検討されている。その1つは、ロシア連邦のすべての学校に共通するロシア史の教育、その1つは、各民族ごとの歴史教育、そして、ロシア人のみを対象とするロシア史教育、の3つである。第2の方向は、ロシアの歴史教科書を「諸民族の歴史の足し合わせ」とするものと批判されている。第3の方向は、多民族国家ロシアからロシア(人)のみを取り出してロシア史を描くとは不可能であると批判されている。そこで,第1番目の方向が有力となっている。しかし,それにより問題点がかえってはっきりと浮かび上がる結果となった。つまり、ロシア人とロシアに住む非ロシア諸民族との間に「共通の祖国」が存在したかのか否かの問題がクローズアップされることになったのである。この問題については、過去を知ることも大事だが、将来にも目を向け、ロシアの諸民族は今後、協力してこの国を再建しなければならない、といった視点で解決が図られようとしている。 (2)研究のもう1つの課題として、ロシアの学校の現状を、学校再編とカリキュラム編成を視点に研究している。-国営の学校の中で、有力大学に進学するのに有利なギムナジアやリツェイに再編された学校の数が増える傾向にある。この他に、英語や数学、物理などの特定教科の重点教育校の数は上記の学校以上にその数が増えている。国家カリキュラム編成の面では、98年2月9日に公表された新基礎学習計画では、旧基礎学習計画と比べると、地域や学校の裁量の余地が少なくなり、連邦全体での必修の教科の比重が高くなっている。
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