方言札とは、近代沖縄の学校において、沖縄言葉を話した児童生徒に渡された罰札である。今年度の研究では、前年度に引き続き、近代沖縄において方言札がどの時期にどの程度存在していたのかという基本的な事項を明らかにすることを課題とした。宮古地域の小学校記念誌に掲載されている回想記や座談会記録を資料とし、「近代沖縄における方言札(2)」を発表した。また、沖縄島周辺の島々の小学校記念誌を資料とする調査は実施したが、論文として発表するには至っていない。なお、沖縄島の小学校、さらに中等学校についての調査は今後の課題として、来年度以降、調査研究を行う。 宮古地域では、多くの小学校で方言札が存在していたことを確かめることができた。。とりわけ、狩俣と城辺の二校では、あらゆる時期に方言札が存在していたことが確かめられた。その一方で、四校について方言札の存在を確かめることはできなかった。これらは、座談会及び回想記録の多少に起因している可能性がある。 方言札の実態について、方言札の導入方法は一律ではないことが明らかにできた。恐らく方言札を導入せずに方言を話した児童を先生に「密告」させる事例や、児童を「督励委員」として学校内外で方言使用を取り締まらせる事例などを見いだすことができた。また方言札への児童の対応は多様であり、標準語を一生懸命勉強したり、無口になるなどのほか、いたずらされて方言を使ってしまわないように休み時間には安全のため木に登る児童がいた事例や、方言札を持っている児童が遊びの仲間外れにされる事例のような児童の対応があったことがわかった。
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