今年度(第二年次)の研究では、潜在急発型の問題群のなかで今日もっとも相談研究が急増し、かつ社会的要請も高い学級経営の擾乱現象(disturbance)-「学級崩壊」(授業崩壊も含む)-に焦点を限定し、こうした潜在急発型の問題群への予防的治療と危機介入に関する欧文・邦文研究データベース(社会学、心理学、精神医学関係文献を含む)を作成するとともに、実践創造参画を伴う臨床的なフィールドワークを実施した。学級崩壊の要因分析に関しては、特別な配慮を要する児童(以下「対象児童」と略す)の問題行動の背景にある、社会文化的要因(マクロ要因)と心理的要因(ミクロ要因)が具体的な活動共同体システム-複数の生活共同体や学習共同体が織り成す動的・生態学的なシステムの複合体系-の内部でどのように発露しているかを、文化-歴史学派活動理論に基づく臨床教育学的な視界から分析した。また、予防的治療及び危機介入に関しては、異種混交のポリフォニックな視点を、再交響化したケースカンファレンスを機軸に、(1).対象児童への治療教育的次元での援助(セラピストとの共同活動)、(2).対象児童への教育相談次元での援助(カウンセラーとの共同活動)、(3).対象児童への教育実践次元での援助(教師や保護者との共同活動)という三つの次元で展開し、それを研究記録として整理した。これらの実践参画による共同研究の歩みそのものを、理論的にも総括するなかで、わが国における学校社会援助(スクール・ソーシャルワーク)理論や教師による学校相談援助(ティーチャーズ・カウンセリング)構築への萌芽が見えてきたことも大きな成果であった。
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