研究期間内において、当初予定していた専門学校の需要・価格分析は、データ整備が困難を極めたために断念し、四年制大学、短期大学、大学院について需要・価格分析を行った。その結果、次のような知見を得た。 1.大学教育の需要については、地域変数が安定的な影響を与えていることを明らかにした。大学の特性では、規模の大きさが必ずしも需要の安定をもたらすわけではなく、中小規模大学の中にも健闘している大学がかなりみられることを示した。ただし、1992年を中心とする18歳人口の増加期に、新興大学・学部の志願者が増えるという傾向がみられたが、分析最終年度の2001年までにはその傾向は収まり、伝統的大学・学部の方が志願者が多くなる傾向が強まっている。 2.高等教育の価格の分析として、私立大学と短大の授業料規定要因の比較分析を行った。その結果、大学の場合は、大規模大学の授業料が安い傾向にあるなど、大学自身の特性や大学所在地域の特徴と経済的に整合する形で授業料を設定しているのに対して、短大の場合は、小規模短大の授業料が安い傾向にあり、財政的に窮地に陥っている可能性があることが明らかになった。 3.大学院教育の需要について、特に修士課程の需要は、大学院教育の価格の如何にかかわらず、学生の家計所得と大学院教育の供給量増加に支えられていることが明らかになった。この結果は、大学院の定員拡大が今後も続くならば、大学院の教育条件の悪化、大学院学生の質の低下、大学院修了後の就職難といった問題が深刻化することを示唆している。
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