本年度は、本研究の第1次報告書『「教育沿革史材料」の翻刻-明治十六年宮城県下私塾寺子屋調査書-』の記載内容の検討を中心に課題の解明に努めた。 「調査書」に収載された私塾(家塾・郷校を含む)は77、寺子屋は205であった。これに「宮城県私塾寺子屋表」(『日本教育史資料』八所収)に見られるものを加えると、私塾86、寺子屋548という数が得られた。そこでまず、宮城県に開設された私塾・寺子屋の全体像を把握するために、この634私塾・寺子屋について、年別開業・廃業数、継続年数、塾主の身分、教師数、生徒数、学習開始年齢と就学期間、束脩謝儀の有無とその内容等について分析を加えた。次いで本研究の主題である教育内容、教育方法について「調査書」の精査に着手し、読書・習字・算術の各使用教科書の整理と各教科書の使用順位等について分析を加えるとともに教育方法上の特色の把握につとめた。これらについては次年度においてさらに検討を加えなければならない。 なお、宮城県の私塾寺子屋と比較する上から長野県の取調書「教育沿革史之部」(長野県庁所蔵)の分析に着手するとともに、「寺子屋私塾一覧」(愛知県図書館蔵)と「教育沿革史草稿」(山口県文書館蔵。部分)を比較研究史料として収集した。
|