(1)成人教育方法論の検討 アメリカ合衆国の成人教育学者M・S・ノールズが発展させたアンドラゴジーを確認した上で、アンドラゴジーに対する批判や問題提起を、(1)到達目標としての自己決定型学習、(2)ニーズの根拠のとらえ直しをめざす意識変容の学習という2点においておさえることができた。また、日本ではまだあまり検討されていない「学習契約」に注目し、学習者個人のニーズを重視することの意義を確認した。それにより、ノールズ批判の一面性を克服し、一定のアンドラゴジー再評価を行なうことができた。 ヨーロッパ、とくにドイツ連邦共和国の成人教育方法論に注目し、「参加者志向」「解釈のパターン論」などの概念を抽出し、アンドラゴジーを超える考え方として位置づけることができた。 (2)実践の検討 理論的検討のほか、実践(成人教育の実践)にも注目し、アンドラゴジーや参加者志向、解釈のパターン論を取り入れた研修制度とその内容を、ドイツの事例(ドイツの市民大学連盟や成人教育研究所における研修制度の内容と方法の事例)を中心に検討することができた。 (3)今後の見とおし 翻訳作業中である、M・S・ノールズ『成人教育の現代的実践:ペダゴジーからアンドラゴジーヘ』の訳の完成をめざすと同時に、日本の大学における事業実践分析を進めたい。
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