本年度は、来年度に予定している本格的な調査研究のための準備作業として以下のことを行った。 (1)日米における政治学、行政学関係の史・資料の検索・収集とそのファイリング (2)日米における教育行政学関係の史・資料の検索・収集とそのファイリング (3)(1)(2)に関連する文献の収集と検討 (4)来年度に実施を予定しているアンケート調査の調査項目の検討 (5)(4)を実施するための依頼状の発送 (6)基礎的資料提供の依頼状の発送 以上の作業の結果、およそ以下のことを確認しえた。 (1)教育委員会制度の下に想定されている「専門性」の内実とその担い手が日米では異なっていること。アメリカにおいては教育委員会制度内における教育長が教育行政の専門家として想定されているため、教育委員会内における「専門性」と「素人性」との対立契機が検討の対象とされる。また実質的には「専門性」による「素人性」の支配が貫徹するが、そのことが「素人統制」の名の下に正当化されてきた。一方、日本においては、教師が教育の専門家として想定されるため、「素人性」と「専門性」の関係は教育委員会の内外の関係として対象化される。逆に、教育委員会内における対立契機と実質的な「専門性」による支配が検討対象とされることはなく、教育委員会制度自体のもつ問題性は認識されていない。 (2)(1)の事態は地方政治・行政の実態とそれを支持する理念の差異によるものである。 (3)(2)の差異は19世紀末から20世紀初頭の「市政改革」原理の継承の有無とその際の変質によるものである。アメリカにおいては「市政改革」の中心的原理(行政制度内における民衆統制の貫徹)を欠落させたかたちで具体化された一方、日本においては教育委員会という制度を継承しながら、それがよって立っていた原理そのものは継承されなかった。
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