本研究は、1工業高校・専攻科、高等専門学校・専攻科、大学工学部・大学院、工業関係専門学校のアーティキュレーションおよびトランジッションに関する研究、2大学工学部に関する研究、3工業高校、高等専門学校、大学工学部、工業系専門学校に関する地域研究から構成されている。 要約的には、上記に対応して次のことが明らかになった。 1 工業高校から高専への編入学例は少ないが、大学工学部への高専からの編入学は増加傾向にあり、かつ大学院まで進学するケースが多い。カリキュラム的には、高専と工学部の専門科目の重複部分は多く、編入学生の側に違和感は少ない。しかし、英語力の不足を感じる者が多い。工業系専門学校は、実際上は工業高校出身者の入学が少なくないが、高校時代の専攻と専門学校のコースが対応していないケースも多く、必ずしも専門性の伸長が目指されているわけではない。カリキュラム的にも、資格取得が主眼となっており、工業高校との接続への配慮や専門の力を全般的につける配慮は特にない。 2 工業高校出身者への大学工学部の対応は、入学時を除いては個別的である場合が多かったが、近年は、むしろ普通科出身者を含めての学力補充対策の中で対応されようとしている。高専からの編入学者については、意欲的であるとの評価がある一方、未定義ながら「教養」の不足を指摘する教官もあった。 3 各教育機関の入学者獲得や進路については、結果的な棲み分けは指摘されているが実証には至らず、地域教育計画としての萌芽は未だ見いだせなかった。 分野別の精査と同時に、教養教育と対置した専門教育を「接続」の観点から再検証することが課題である。
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