本研究は、以下の目的のもとで実証的に進めている。第一に、学校・教職員をエンパワーメントするためのマネジメント技法のモデル開発。第二に、校内研修・研究を中心とした研修方法の見なおし-アクション・リサーチの適用。第三に学校組織に創出型の「活力」を引き起こすイノベーターの特性把握。第四として、学校組織進化過程の記述と分析(進化要因の解明)である。 上記の目的のもと、本年度は、以下の課題に取り組んできた。 (1)学校組織開発に資する諸概念・理論の整理・検討 国内の先行研究の整理・検討だけでなく、例えば、アメリカの先行研究に見ることができる「学習する組織/組織学習(learning organization/organizational learning)」という概念に着目した。近年、日本よりも先んじて学校の自律性確立へ向けた施策を実行し普及させてきたアメリカにおいて、この概念は学校経営論の中で高い関心を注がれている。 (2)事例の収集と分析 上記(1)の課題において整理・検討された概念視角から、実際の学校事例を収集し、分析を試みた。 例えば、大津市の小学校の研究実践では、自己の教授技術や授業方法に反省を加え、自らの失敗を認めつつ、軌道修正を試み、発想の転換を図る実践に着目した。自己の教育実践への注目から、組織の活性化という一連の動きが読み取れる事例であった。また、以下の事例は「学習する組織/組織学習」の事例である。学校が地域や保護者との間にいくつかの情報回路をもち、それらを通じて様々な情報の発信・受信を試み、地域の側には、学校や子どもあるいは教員に対する親近感、期待、協力的な姿勢が生み出される。「新たな価値」の創造が、学校の教育活動の質を変え、「学習する組織」としての教員集団の自己変革に対する意識を高めた。 今後は、事例の収集をさらにすすめるとともに、課題を明らかにしていきたい。
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