本年度は、申請者の手許にある香港新界や海南島の宗族の族譜のスキャナー等による読み取り作業と、画像データベース化を中心に行った。スキャンニングの作業は、大学院生を研究補助者として行わせ、手元の族譜資料をほぼ入力し終えた。また、スキャンニングにより作成した多量の一次画像データを大容量ハードディスクに保存し、またそれをDVD-RAMディスクにバックアップする作業を行い、これら一連の作業に対して、研究補助謝金を支出した。画像データベース構築のためのインデックス作成作業に関しては、幾通りかの試行的な方法を考案し、一部の族譜について画像データベースを試作した。作業はまだ完成段階には達していないが、利用効率のよいインデックス作成の方法について、一定の見通しを得るに至っている。 並行して、国立民族学博物館にも2度の出張を行い、同館の牧「牧野巽文庫」所蔵の華南の族譜資料を調査し、その一部の複写を開始すると共に、今後の画像ファイル化の計画を立てた。また、同博物館の専門家から、画像データベース作成上のアドバイスを受けた。 族譜の画像デー夕べースは構築途上であるが、画像ファイルとして保存して随時デスクトップ上で参照できるようになった一部の族譜資料は、華南地域の宗族についての分析と論考に早速活用しており、本年発行予定の華南の宗族形成や移住について扱った論文、著書等(裏面の〔研究発表〕の項目参照)の執筆に参考資料として利用した。
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