平成11年度は、主として人種理論に関する重要な文献を収集し、先行研究の整理に努めた。国内・海外からの関連図書を購入または複写をしたが、それらの収集に基づく購読は、歴史的な人種概念構築の過程を明らかにする作業に不可欠であった。アメリカ合衆国カリフォルニア大学ロサンジェルス校、バークレー校への海外出張では、国内では入手不可能な主として19世紀に書かれた人種理論に関する資料収集を行った。また関連研究者との意見交換も行った。国内では国立国会図書館、東京大学図書館等で、明治期などの人種概念受容につづく関連出版の文献を閲覧した。また現代のアメリカの動きに関しては、雑誌や著書のほか、インターネットを用い、最新の情報を入手している。それによりアメリカ人類学会、アメリカ自然人類学会の人種概念をめぐる活発な動きが把握できた。 研究成果は平成11年4月以降に、欧文で人種の境界に関する論文と、『岩波講座世界暦史』のなかで、アメリカにおける異人種の遭遇と葛藤に関する論文を発表した。また現在、アメリカ合衆国の人類学と人種概念との関係にかんする論文が近く刊行される『文化人類学のフロンティア』(ミネルヴァ書房)に収録される予定であり、また単著に向けても執筆を始めている。また平成12年5月の日本民族学会では、このテーマについての研究成果を口頭発表する予定である。 次年度は、続けて資料収集を行ったり、関連分野の専門家と意見交換を行ったりする一方、執筆により重点を移すことになるだろう。
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