本研究は年中行事や祭礼行事の一部をなすような民俗芸能が、地域伝統芸能全国フェスティバルや地方博覧会のような大規模イベントにおける舞台化を通じて、現代の地域文化として再編される過程を明らかにしようとしたものである。具体的な研究対象としたのは、地域伝統芸能を活用した行事の実施による観光及び特定地域商工業の振興に関する法律に基づいて実施された第7回地域伝統芸能全国フェスティバル和歌山(1999)および第8回地域伝統芸能全国フェスティバル北海道(2000)、そして兵車県淡路島を会場にして2000年に開催されたジャパンフローラ2000国際花と緑の博覧会の市町村イベントである。ふたつの地域伝統芸能全国フェスティバルでは、全国から選ばれた都道府県を代表する民俗芸能が舞台化される過程を、また淡路花博の「市町の日」では、県内各自治体を代表する民俗芸能が舞台化される過程を、おもに参与観察と記録の分析を通じて明らかにすることにより、民俗芸能が本来保持したであろう民俗的基盤を離れて、行政の手によって都道府県や市町村を代表する地域文化としての役割を与えられ再編されゆく過程を確認することができた。他方では、これらの大規模イベントに出演する各地の民俗芸能のうちから、八代妙見祭の亀蛇や大海の放下などに注目することにより、民俗文化が住民により伝統ある地域の文化として客体化され、地域振興や地域アイデンティティの確立に大きな役割を果たす現場を確認することができた。
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