年度計画にもとづき、東京都、群馬県、山梨県、長野県などの史料保存利用機関において、江戸幕府の公文書に関する文献と史料の調査を行った。具体的には、幕府・朝廷間、幕府・蕃間、幕府・旗本間、幕府・寺社間、幕府・町間、幕府・村間でやりとりされた史料に注目して、調査・収集を行った。 今年度は最終年度であるため、これまでの調査の成果を、文献と史料に大分類したうえで、上記のやりとりをもとにした小分類を用いて目録化した。地域史研究の進展の差や、調査地の制約などにより、目録は必ずしも完成されたものにはなっていない。しかし、分類法を整理し、基礎的文献や基礎的史料を把握した意義は大きいと思える。今後、対象地域や機関を拡大することにより目録を充実化させていきたい。 これらの史料調査・分析の過程で、日本近世において、18世紀前半に8第将軍徳川吉宗によって展開された享保改革が江戸幕府の公文書管理の重要な画期であったことが、あらためて確認されるとともに、吉宗の腹心ともいうべき大岡忠相が公文書政策に重要な役割を果たしていたことが明らかになった。すなわち、大岡は町奉行時代に江戸の法令を集め整理した『撰要類集』を編さんするなど幕府の情報蓄積に努め、その後寺社奉行に異動するとともに、公文書の持ち回りシステムを確立したのである。全国の代官所への公文書作成の指示もあわせて、享保改革の重要性が、あらためて確認された。
|