1999年度は、当初は、第一に、摂関期の言語の暴力や殴打・闘乱など暴力の多様性や、武士の対極である群盗を解明し、第二に、院政期の権門と暴力の関係や、権門の掌握する武力を検討する予定であった。第一の課題はなお検討中であるが、史料を収集し終わり、2000年度中に、暴力の多様性・群盗ともに執筆が可能となった。また、第二の課題については、12世紀の藤原摂関家を素材に権門が自立する過程を詳述し、権門と暴力との関係を追究する視角を得ることができた(元木『藤原忠実』)。 一方、当初の計画では、2000年度に王権と武力、暴力の発展の通史的把握を予定したが、その一部は今年度に実現することができた。すなわち、1999年度と2000年度の計画が、実際には並行して進んでいるわけである。まず、当初は摂関期・院政期を対象とし、その通史的叙述を目的としたが、平安時代を位置づけるには、より広く把握する必要性を痛感した。そこで、戦争が発生する弥生時代から院政期までの首尾一貫した把握を目指し、そのことによって平安時代の固有性を発見することができた(西山「古代の戦い・暴力・争い」)。さらに、王権と暴力の関係につき、とくに院政期の院御所・天皇居所と守護の武力を検討し、その特色を把握することができた(元木「王権守護の武力」)。 なお、以上のほか、暴力の一形態である投石と都市との関係を分析し(西山「平安京の<門前>と飛礫」)、死を焦点に中世武士の特色を分析した(元木「中世前期における武士の死」)。総じて、2000年度の予定を一部で先行着手したことによって、全体の計画・作業に見通しを得ることができ、2000年度の研究をより順調に進めうることとなった。
|