(1)現地調査 中国雲南省は照葉樹林文化が色濃く残り、日本の伝統的文化との関連も強く指摘される地域である。棚田的水田景観など、中国の他の地域にくらべても、日本と共通する部分が多い。雲南省のタイ族・イ族などの少数民族の伝統的村落景観を調査し、村の入り口の門や門を守る人形など、日本と共通し、しかも華北などには少ない村境の儀礼などの調査を行った。 また近江湖西の山門領木津荘域(現新旭町)のうち、昨年に引き続き、全体の約三分の一にあたる森・田井・辻沢・日爪・木津の五地区の現況調査を実施した。木津荘は鎌倉期には若狭地域の物資を集積し、京都へ運ぶ中継地点であり、山門の最重要荘園・港津であったが、二〇年ほど前に圃場整備が行われ、伝統的村落景観は消滅している。古老からの聞き取り調査などを通じて、圃場整備前の田地一筆レベルの俗称地名・水利、農業・用水慣行、石造物の分布・墓制などを一〇〇〇分の一地形図上に記録するとともに、これらの歴史情報をカード化するとともに、特に湖岸の環境変化に着目して、復原研究を進めた。 (2)史料調査・収集 山門領木津荘に関わる新旭町の饗庭昌威氏所蔵文書のデータ・ベース化を引き続き進めた。その他聞き取り調査と関連して、該当地区に伝えられた近世・近代文書を調査し、重要性の高いものは撮影・筆写・コピーなどの手段をとった。 また沖縄・韓国・中国・台湾の村落に関する歴史・民俗関係文献、特に沖縄・中国南部の石敢当、韓国のチャンスン・ソッテなどの村境儀礼に関わる史料の蒐集を進め、その特質や共通性と差違性の検討を進めた。
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