今年は、府県政研究の前提として、1871年の廃藩置県の経緯と県政の成立過程を追及した。具体的には、旧藩時代の藩領が県域とほぼ同じ藩を取り上げ、戊辰戦争後の藩体制の解体から廃藩置県に至る過程の古文書史料を収集し、藩政の実態的な解明につとめた。まず鳥取藩政を明らかにするために、1999年8月と11月に鳥取県立博物館や鳥取県立図書館を調査し、池田家文書の中から明治初年の鳥取藩主池田慶徳および同藩の藩政開拓・廃藩置県関係の史料を収集した。10月に和歌山県立文書館の和歌山藩関係史料、11月には徳島県立文書館の徳島藩蜂須賀家関係史料を調査・収集した。3月には熊本大学附属図書館に出張し、同館の永青文庫に所蔵されている熊本藩細川家関係史料を調査した。いずれも必要に応じて筆写し、あるいは写真撮影を行い、後に原稿や写真・コピーをファイルなどに整理した。 これらの調査・収集からは、従来の刊本史料集に集録されていなかった新たな史料を発見することができた。徳島藩については、徳島県立文書館に加えて東京の国文学研究資料館・史料館の調査の重要なことがわかり、後者に所蔵された史料の中の未整理分から、廃藩置県およびその処理に関する興味深い史料を発見することができた。また、永青文庫所蔵の熊本藩細川家関係史料の「探索録」などからも、従来の刊本である『肥後藩国事史料』が省略・削除していた部分を発見することができ、実態調査にともなう事実関係の解明と新たな分析視角の獲得に成果をあげることができた。今後は、それらの史料の整理・分析を重ね、有力藩の廃藩置県に向けた対応、県政への転換とその課題を明らかにしていきたい。
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