今年度は、明治前期の府県政に重要な意義を持った廃藩置県と士族の動向について、調査・研究を行った。調査については、昨年の鳥取・和歌山・徳島・熊本藩などの西南雄藩に対して、福井・松本・松代・弘前などの北陸や東日本の諸藩の史料を収集し、分析を行った。具体的には、7月に福井市立歴史博物館と福井県立図書館、10月に長野県歴史館と松本市文書館、2月に八戸市史編纂室と弘前市立図書館などの調査を行い、主に藩政と士族授産に関する史料収集をすすめた。それらの収集史料については、専門家や学生の協力を得て、課題ごとの分類を行い、活字になっている刊本などと比較・校訂を行った。 また研究については、吉川弘文館から『廃藩置県の研究』(平成13年1月刊、516頁)を刊行した。廃藩置県断行の経緯を諸藩の動向とあわせて分析し、廃藩置県後の士族の対応などを追究したものである。同書はこれまでの研究を集約した仕事であるが、昨年の西南雄藩の史料収集の成果、あるいは今年度の福井、松代両藩の調査史料も活用している。 さらに、今年度は府県の地方官研究に向けて、有力地方官のリストアップを行い、すでに刊行されている伝記などの文献整理を行った。地方官の略歴、実績などについては、パソコンを用いた幅広い分析を行う予定で、その基礎的作業といえる。府県政における地方官の役割、旧藩士族の影響を総合的に研究する予定である。
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