明治前期の府県政の整備・形成の過程を、地域の史料をもとに分析・検討を重ねた。 とくに、明治4年の廃藩置県後、江戸時代以来の藩体制がどのように解体され、いかなる課題が残されたのかを制度・財政・社会の分野から実態的に考察した。大蔵省や地方官の動向を分析・検討し、府県政の諸課題が近代国家形成にいかなる影響をあたえたかについての研究成果をまとめた。 具体的には、まず明治前期の府県政に関する史料収集、とりわけ各県の文書館・資料館での史料収集を行った。山口県文書館、鳥取県立博物館、弘前市立図書館、青森県史編纂室、長野県立図書館などで、旧藩や府県政関係の史料を調査・複写・写真撮影した。つぎに、府県の制度・組織の整備状況を把握し、その上で同時期の地方官の任免・系譜を追究した。草莽の志士から地方官に転じた人物などを取り上げ、その分析を行った。また、廃藩置県を画期とした府県政と旧藩政との関連性、および廃藩置県後の士族授産・地租改正・学制などの新政を具体的に分析した。とくに、創設期の府県に対する政府側、とりわけ大蔵省に設置された新県掛を取り上げ、府県開設の経緯とそれに対応した新県掛の実態を解明した。明治前期における地方巡察の派遣と府県側の対応の考察などは、従来ほとんど詳しく検討されてこなかった研究分野である。 これらの研究成果は、主に拙著『廃藩置県の研究』(吉川弘文館、2001年1月)、拙稿「廃藩直後の府県政と大蔵省新県掛」(『近代日本の政治と社会』2001年5月)として論文発表し、あるいは「維新官僚への軌跡-高松実村と岡谷繁実-」の論文発表を予定している。
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