本研究は両大戦間期における日本陸軍の政治・軍事・社会認識を検討することによって、日本陸軍がなぜ激動の昭和史の推進主体となったのかを明らかにしようとするものである。研究手法としては、陸軍将校の認識や思想に主たる焦点をあてるため、広く軍人の認識や思想を表明している文書を収集整理した。第1章では、陸軍の第一次大戦研究の実態を明らかにした。第2章では、田中軍政との関係に言及した。第3章では、1920年代の陸軍の総力戦構想の全体像を考察した。第4章では、当該期の陸軍にとってのもうひとつの重大事項である「大正デモクラシー」に対する認識に焦点をあて、その柔軟な対応を明らかにした。第5章では、陸軍の軍学校教育制度の改革を、幼年学校の改廃問題を中心にして検討し、その「大正デモクラシー」との関係を考察した。最後の第6章では、1920年代の陸軍のアメリカ認識が、国内の「大正デモクラシー」認識と表裏一体の関係にあったことを明らかにした。以上により両大戦間期の陸軍の思想と行動の原型を提示しえたが、今後は引続き、そうした前提をもとに、昭和期の陸軍の実態に迫っていきたい。
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