本年度は研究の総まとめを行うため、第一に補足調査を実施した。京都、大阪、広島の諸地方を歴訪し、特に紺紙金泥経にある見返絵の詳細な調査を行って、その解説作業を試みた。また、これまでの採寸の不備を補足・訂正し、パソコンによって表を作成し、成果の総まとめの原稿を作成し終えた。 第二に、写経調査を行う過程で目に触れた版経についても、その大概を把握することにつとめた。時代は少々異るが、江戸時代初期に出版された『天海版一切経』の調査について、本門寺、久遠寺、妙成寺、妙顕寺に伝来するものの現存目録を作成し、これもあわせて研究成果報告書にまとめて収めることとする。 以上のような調査・研究の結果、平安時代の『法華経』写経については、ほぼその基本的性格を捉えることができたと思われる。この成果は、来年後になって「院政期における写経とその儀礼」と題する論文をまとめて、発表する予定である。
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