古代の荘園や村落における年間を通じての農事の展開状況を、記録・文書・木簡や発掘調査によって得られた考古学的データを中心に、季節や要月・閑月の視点から整理し、起土・斬草・塞穴・開溝・祭祀・播殖・稲刈り・開墾などの季節的実態を把握するため資料収集を進めた。主な対象に東大寺領荘園に関する「正倉院文書」と荘園と村落に関する遺跡のデータを取り上げ、特に春・夏季における農事の展開状況に焦点を合せ農事暦の作成を試みた。そこでは、(1)春(正月〜3月)は閑月を含みながら、荘園にとって経営の準備に多忙な段階にあった。それは借耕地(小作地=賃租)の手続き、田植え前の耕地の売買、溝・堰など水利の整備、起土・斬草・種籾の準備など。(2)夏(4月〜6月)は播殖(種蒔き・田植)、灌漑整備など。とくに津幡町加茂遺跡出土木簡から、田夫・百姓の農作業、労働対価に対する魚酒の提供、溝・堰の労作、5月30日前の田植終了など、本研究課題に密接に関わる貴重なデータが得られ、他の収集資料を含めての総合的な検討に入った。
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