本研究を実施するためには、研究史に立脚した近世越後における割地制の研究をまずする必要があった。本年度の研究実施計画にもとづいて史料調査・研究・蒐集を行った結果、近世越後の割地制について次のような新たな知見を得るとともに割地制が地租改正後存続する条件の一つを見出すことができた。 1.近世越後の割地制は、すべて村学位に農民が主体的に実施する村型割地であった。したがって色々な実施方法による多様な割地制が展開された。 2.近世越後において割地は地ならしとも呼称され、割地と地ならしとは全く同じものであるという説が定説となっていたが、検討の結果両者は全く別物であったこと、しかし両者の間には地ならし→割地の過程で実施されるという関係があったこと、などが明かとなった。 3.割地実施村においては、土地の割替を通して、土地が土地と高とに分離され、所持が処分と用益とに分離され表現されるようになった。 4.処分を意味する所持という表現は、高に使用され、用益を意味する所持という表現は土地に使用されるようになった。 5.4のため所持の使用のされ方が不明瞭となり、用益を意味する場合の所持という表現は、進退という表現で置き換えられるようになった。 6.3.4.5のような認識および表現の仕方は、割地創始期にはなかったが、割地を長期間繰返し実施することによって、このような認識が徐々に生まれ表現されるようになった。 7.認識および表現の程度と割地実施村の置かれた自然的悪条件の程度が、地租改正後の割地の存続と深く関係したようである。
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