本年度は資料収集と成果報告作成を行う。本年度は東京以西方面に重点を置き、資料を収集した。特に、1877年に東京上野公園で第一回内国勧業博覧会が開催された後、全国各地で博覧会を縮小して開催された共進会と、各府県の農村で開催された農事会の資料の調査を行った。調査の対象地域として、府県の中でも勧業活動が盛んであった岐阜県に焦点をあて、岐阜県歴史資料館にある棚橋健二文書を調査した。この結果、共進会資料を含む大量の勧農関係の文書が所蔵されていることが判明し、『棚橋健二家文書目録』(3)の「60勧業」の中から、資料775点を撮影した。内容は、岐阜県内に展開する博覧会出品勧誘活動、共進会の開催、農談会の開催、農事会組織、農区編制などに係わる資料である。この資料により、地方の末端ではどのような勧業活動が展開されていたかを詳細に知ることができた。現在、この資料をもとに拙稿「内務省の勧農政策」を執筆中である。なお、岐阜県歴史資料館の職員のご教示によれば、棚橋健二家文書は、まだ未整理分が3千点ほどあるということなので、整理が終わり次第、再調査をする予定である。 また、今年度、改修のため調査の出来なかった京都府立総合資料館は、博覧会資料を多量に所蔵しており、来年度は重点的に調査を行う予定である。 昨年度収集した1881年に東京上野公園で開催された第二回内国勧業博覧会の関連資料をまとめ、拙稿「第二回内国勧業博覧会の開催」(近代日本の政治と社会刊行会編『近代日本の政治と社会』岩田書院、2001年)を刊行する予定である。
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