研究課題/領域番号 |
11610366
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研究機関 | (財)元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
小村 眞理 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (10261215)
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研究分担者 |
木沢 直子 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (50270773)
井上 美知子 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (70223279)
植田 直見 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (10193806)
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キーワード | 櫛引八幡宮 / 長谷寺 / 大須二子山古墳 / 8畝平組紐 / 威糸 / ループ操作技法 / 絹 / 製錬 |
研究概要 |
1.要素数の測定 櫛引八幡宮と長谷寺では、修理時にはずされていた威糸を借していただき、顕微鏡で拡大しながら、威糸(8畝平組紐)の1条(またはその一本ずつ)を動かし、越数(沈数)を確認したところ以下の要素数であった。糸が粉状に劣化していてもなんとか確認できた。要素数はすべて奇数の2倍でありループ操作技法によると考えられた。 (1)青森県八戸市櫛引八幡宮 白糸威褄取鎧兜・大袖付(国宝)白糸:38(ループ数19)S弱撚糸 薄紫:38(ループ数19)S弱撚糸 赤糸威鎧兜・大袖付(国宝)赤糸:威42(ループ数21):菱縫26(ループ数13)逆板畝目糸:38(ループ数19) 白糸威肩赤胴丸兜・大袖付(重文)白糸:34(ループ数17)Z強撚糸 赤糸:34(ループ数17)Z強撚糸 紫糸威肩白浅黄鎧兜・大袖付(重文)萌葱:38(ループ数19)S弱撚糸 (2)奈良県桜井市長谷寺 赤糸威鎧:威42(ループ数21) 2.絹の精錬について櫛引八幡宮赤糸威鎧 (1)大須二子山古墳出土桂甲に用いられている組紐は断面の顕微鏡写真による観察から精錬した絹であると思われた。 (2)櫛引八幡宮赤糸威鎧に用いられている組紐は断面の顕微鏡写真による観察から精錬した絹を染色していると思われた。このことは、手で触ったときの感触や、染色時の色相から考えられたことを反映していた。 3.復元の試み 絹糸の質感を整えることができれば復元は可能と考えられたが、似たような質感を持つ糸がどこにでもあるというのではないことが判った。鎧の糸は拡大してみるとまっすぐな繊維の束であるが、絹の持つねじれや毛羽立ちをそこまで取り除くことは困難である。 櫛引八幡宮赤糸威鎧の威糸1条の繊維数を数えたところおよそ800本以上あった。このことから1条に繭400個以上がつかわれていたことを確認した。
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