簡牘から紙への書写材料の移行を明らかにせんとした本年度、その初年度として行った調査・研究の結果、以下の結論に達した。 まず書写物によって、紙に移行する時期を異にするということ、具体的に言えば、簡牘をいちはやく脱皮し、紙を主たる書写材料としたのは、書物である。おそらくそれは、後漢中期であろう。次に紙に書かれるようになるのは、手紙等の私文書であり、3世紀後半にあたる楼蘭出土の紙の大部分が手紙であったことは、これを裏付ける。やがて公文書 中でも詔書、上奏文が紙に書かれるが、その場合、検・封印の方法は、従来通り木牘と陰刻印が使われた。最後まで木簡が使われたのは、戸籍、帳簿の類でおそらくそれが最終的に紙になるのは4世紀後半東晋に入ってからであろう。
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