前年度(平成11年度)の成果として、「三国魏の明帝-奢靡の皇帝の実像-」、「王沈『釈時論』訳注」、「内藤湖南の中世貴族成立の論理-『支那中古の文化』の分析を通して-」が雑誌、論文集に掲載された。 今年度(平成12年度)は前年度に引き続き、魏晋時代(六朝前期)の貴族制社会の特徴を、具体的には、西晋時代の九品中正制を核とする選挙における溷濁に対する批判の内容から探究した。その批判を(1)民間からの批判と(2)朝廷での批判に分け、(1)としては西晋の元康年間(291-99)に出た『釈時論』と『銭神論』に関して研究を進め、「『釈時論』の世界」と「魯褒『銭神論』訳注」を投稿した。前者は、権勢者とその子弟、その追従者が選挙の鍵を握る人物評価における名誉・名声を排他的に独占することによる溷濁を見出だした。後者は『銭神論』の2つのテキスト、『芸文類聚』本と『晋書』本、それぞれの校勘・押韻を含む訳注である。また、平成12年8月に中国の天津市の南開大学で開催された中国中古社会変遷国際学術研討会での「≪釈時論≫≪銭神論≫所見西晋選挙的溷濁」の題目でもっての口頭発表では『釈時論』と『銭神論』を対比的に論じた。(2)としては、その代表である劉毅の「九品八損」の議について、「魏晋における九品中正制批判の再検討-劉毅の「九品八損」の議の分析を中心に-」という題目でもって、私的な研究会で口頭発表した。
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