1)学術レビュー: 北京で北京広播学院副院長の張玉明氏、南京で南京大学民国史研究センターの張憲文氏、台湾・国史館の侯氏、来日中の台湾・中央研究院近代史研究所の林満紅氏、シンガポールで国立シンガポール大学のNg Chin-ong氏に、それぞれレビューをおこない、関連する史料情報を得たほか、研究テーマに関してアドバイスを受けた。 2)史料調査: 今年度も、引き続いて南京の中国第二歴史档案館および北京市档案館において、1920年以降の華北地域の都市化とメディアについて、とりわけラジオ放送に関する史料に重点をおいた調査に従事した。また、シンガポールの南洋理工大学Asian Media Information & Communication Centreおよび国立シンガポール大学においては、現代中国のメディア研究に関する成果を調査する機会を得た。さらに、国内では、昨年度に続いて国立公文書館にて傍聴に関する文書を調査したが、この作業は未完。 3)成果: こうした活動を通じて、日本の国策通信会社として有名でありながらその全貌が不明だった華北電信電話株式会社についてようやく解明できる段階までにいたり、2本の論文を公表した。また、北京市档案館に所蔵されている戦時下成立の華北広播協会に関する文書目録を作成・公開した。さらに、戦前の東アジアにおけるラジオ放送について構造的に明らかにした論文は現在審査中にある。 4)課題: まず、国民政府および華北政務委員会の情報・宣伝政策、とくに放送と映画が華北地域にもたらした影響を明らかにするとともに、日華間に敷設された海底電線にまつわる問題、沿海部都市化過程における租界回収問題などについて検討する予定である。
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