本年度の主要な成果は次のとおりである。 (1)第一次大戦が東アジア地域の都市にもたらした影響についての考察 ・大戦中布設された青島佐世保間の海底電線をめぐる日中間の外交交渉の全貌を初めて明らかにした。これは前年度に収集した台北の中央研究院近代史研究所の档案を用いた。⇒『東洋学報』第83巻第4号に掲載。 ・大戦後崩壊したドイツ、ロシア両帝国が天津に設置していた租界の返還交渉、及びその後の特別区設置の経緯について、同じく中央研究院近代史研究所の档案を用いて明らかにした。⇒『近きに在りて』第39号に掲載。 (2)第二次大戦中の日中間の電波戦争についての考察 ・日中戦争期、日本(内地・外地)、満洲国、蒋介石政権、汪精衛政権といった主要なる政権主体間に起こった電波戦争を、アメリカ、イギリス、ソ連の放送戦略をまじえて分析し、1930年代から40年代の東アジア地域における放送宣伝戦略について明らかにした。⇒UCバークレイ校と島根県立大学の学術交流シンポジウムでディスカッション・ペーパーとして提出。 ・北京市档案館にのみ所蔵されている日本の傀儡機関「華北広播協会」の社内文書の目録データベースを作成。⇒島根県立大学「メディアセンター年報』第1号に掲載。 なお、本年度の外国旅費による海外調査は、成果公表を準備しているスタンフォード大学フーヴァー研究所のアーカイブズ、及び米国国立公文書館所蔵OSS文書のデータベースを作成するための謝金、およびそのための一部マイクロフィルム購入費に急遽転用した。
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