本研究は、16世紀から17世紀中葉にかけてのポーランドにおける国制改革論の系譜を、その内容と表現形態の両面から考察することを目的とする。3年間の研究期間の初年度にあたる本年度は、貴族共和制期の政治文化全般、および政治思想史に関するポーランド内外の研究の現状を把握し、また、関連する研究文献と資料を収集することを中心に研究をおこなった。具体的には、 1.本研究の遂行に必要な研究書、史料集、参考図書、マイクロフィルムを収集し、書誌的な情報の整理を作業をおこなった。 2.平成11年9月15日〜28日にかけて、ポーランドにおいてワルシャワ大学歴史学研究所Slawomir Gawras教授より当該研究に関するレヴゥーを受け、ワルシャワ国立図書館とクラクフ・チャルトリスキ博物館附属図書館において一次史料の調査をおこなった。また、平成12年1月30日〜2月2日にかけて北海道大学附属図書館・スラヴ研究所において、本研究に関連する資料の調査をおこなった。 3.本研究の成果の一部を盛り込んだ論文「ヘンリク・ヴァレジィ体験-ヤギェウォ王朝断絶前後のポーランド=フランス関係-」(中山昭吉・松川克彦編『ヨーロッパ史研究の新地平-ポーランドからのまなざし-』、昭和堂、2000年、26、54頁所収)を執筆・発表した。本論文では、ヤギェウォ王朝断絶後の国王自由選挙をめぐる議論や、フランスとポーランドの国制の比較論(絶対王制対貴族共和制、世襲王制対選挙王制)など、空位期に流布した政治パンフレット類にみられる国制改革にかかわる言説が、16世紀後半のポーランド貴族層(シュラフタ)の対フランス観に大きな影響を及ばしていたことをあきらかにしている。 以上のような研究成果をふまえて、来年度は、ルネサンス期の政治著述家のテキストを、具体的な政治過程や社会状況とのかかわりに注目しながら読解する作業を進めていく予定である。
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