研究代表者(阿河)は、近世フランスの歴史研究のうち、「フランス史」の編纂事業を検討するため、昨年に引き続き、パリの国立図書館と学士院図書館(マザラン図書館)に赴き、デュプレクス、コルドモワ、ダニエル師などの「フランス史」のジャンルに属する著作を閲覧した。同様に、東京大学、慶応大学などで「フランス史」関連の研究書を閲覧した。その間、とくに二宮宏之(フェリス女学院大学)、森原隆(早稲田大学)、宮崎揚弘(慶応大学)各氏から17世紀の歴史学のあり方や、知識人のネットワークをめぐる情報をえることができたが、あわせて、当時の歴史家がおかれた歴史的環境を視野に入れた考察や、また、ハーバーマスの「公共空間」の理論をふまえることの重要性を認識した。歴史書の書き手としての歴史家だけではなく、読み手としての読者層を念頭においた研究が不可欠となるからである。 研究分担者(進藤)は、ドイツの歴史が他民族と接する国境地域のティロール地方でどのように教育されているかを検証するため、東京大学、一橋大学などの図書館で史料調査を実施した。その結果、これまで、あまり研究対象とならなかった歴史教育が、「国民国家」の形成の途上できわめて重要な役割をはたしていることが再確認された。
|