本年度はまず、研究課題「中世中期イタリアにおける支配者層の諸相の比較研究」に関する文献収集から始めた。日本において大学等学術図書館で収集されていて入手可能な文献を確認のうえ、イタリア書を中心として図書発注をおこなった。それとともに、文献整理、さらなる情報収集を目的として、コンピュータその他周辺機器を購入した。8月にはイタリアのボローニャ大学中世史・古文書研究室において、Muzzarelli教授、Montanari教授と話し合いをおこない、今後の研究の進め方について助言を得た。また、同じくイタリア滞在中には1300年に誕生しイタリア社会に大きな意味をもった「聖年」のありかたを探るべく、ローマにおいて巡礼教会を回るとともに、2000年の「大聖年」に向けて発刊されている多くの聖年の歴史(とりわけ誕生期)をめぐる研究書を入手した。中世後期のイタリア社会、なかんずくローマ教皇のいるローマ社会を背景としたこの聖年については、2000年のうちに刊行される「聖年の誕生」(京都大学人文科学研究所「コミュニケーションの社会史」研究班の研究成果の報告書所収、ミネルヴァ書房刊行予定)において、教会がうわさをとりこんでイヴェントをつくり、さらにそれを定例化する動きをを考察した。また、12月には、京都イタリア文化会館において8月に撮影したスライドを活用し、一般向きに講演をおこなった。 なお、イタリア側の事情で、発注分全てを入手することはできず、文献整理はまだ十分におこなうにいたっていない。その他の都市の支配者層に関する考察は、これからの課題である。
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