本年度は、中世ローマにおける大きなイヴェントたる「聖年」創設に関わる中世ローマの動きを捉えた「聖年の誕生」の刊行をみた。また、中世イタリア南部にシチリア王国を建設したルッジェーロ2世が、王国の内外の情報を収集し作らせた地理書『ルッジェーロ王の書』をめぐって、「ノルマン朝シチリアのイスラム文化の傑作-イドリーシーの地理書」を『アジア遊学』誌上に発表する機会を得た。いずれも、文化面から、中世イタリアの支配者の意識を問い直す場となった。 次に昨年主として取り組んだ中・北イタリア都市のポデスタ制については、昨年のデータに加えて、4都市のデータを入手し、より多くのデータに基づいて、考察を進められることとなった。このポデスタ制については、論文集『移動と空間の社会史』(仮題、ミネルヴァ書房刊行予定)に論文「中世イタリアのポデスタ」という形で発表する予定である。 ポデスタ制と並んで、本年の課題としたボローニャ支配者層の諸相を多角的に捉えるという課題については、とりわけ1256年に出された奴隷解放令実施のために作成された奴隷所有者および保有奴隷リストであるLiber Paradisusを中心にデータ整理および研究史整理をおこない、13世紀末の支配者層間の抗争の結果生じたLambertazzi派の追放の年代記からのリスト、固定資産税帳簿などのデータと合わせて検討を進めてきた。その検討について、平成13年12月15日に関西中世史研究会において「13世紀ボローニャの支配者層の諸相」というテーマで発表する機会を得た。なお、このボローニャ支配者層をめぐる検討のうちLiber Paradisusについては、論文集『史料が語る中世ヨーロッパ』(仮題、刀水書房刊行予定)に論文「Liber Paradisusにみる13世紀ボローニャの都市貴族」として発表する予定である。
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