中世中期のイタリアでは、北部の都市群、南部のシチリア王国、領域国家と都市群の中間的性格を持つ中部という3つの地域の枠組みができてくる。本研究は、この諸地域の性格の差異を総括的に把握することを目的とした。 そのため、初年度は13世紀の最後にイタリアを中心に大きな人の動きがみられた「聖年」に注目して、考察した。この考察によって、現在まで続く「聖年」事業が、民衆のうわさをローマ支配者層が受け入れ、制度化されたことが明らかとなった。 次年度は、都市群に共通する制度としてのポデスタ制に着目し、研究を進めた。 都市法上、外国人を登用する最高ポストであるポデスタは、各都市に共通して設置され続けたので、共通の支配者像を明らかにできると考えられる。本研究においては、北・中部イタリアの都市のポデスタ任官者リストを作成し、ポデスタを共有する地理的・意識的空間の存在を示した。この考察については、平成12年11月3日京都大学西洋史読書会大会で報告をする機会を得た。また、論文集『空間と移動の社会史』(仮題、ミネルヴァ書房刊行予定)に発表する予定である。また、空間認識のありかたを示すものとして、南部のシチリア王国の地理書の検討をおこなった。 最終年度の課題は、ボローニャ支配者層の諸相を多角的把握である。これについては、都市官職や市内の「塔」のリスト、13世紀末の支配者層間の抗争時の有力者のリスト、1256年のLiber Paradisusからのデータを分析することによって、平成13年12月15日に関西中世史研究会において発表する機会を得た。その分析のうちLiber Paradisusについては、論文集『史料が語る中世ヨーロッパ』(仮題、刀水書房刊行予定)に発表する予定である。
|