研究課題/領域番号 |
11610405
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
高橋 裕子 津田塾大学, 学芸学部・英文学科, 助教授 (70226900)
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研究分担者 |
宮井 勢都子 東洋学園大学, 人文学部・英米地域研究学科, 教授 (10200114)
大辻 千恵子 都留文科大学, 文学部・比較文化学科, 教授 (90176941)
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キーワード | 津田梅子 / 福祉国家 / 奴隷制廃止運動 / 多文化主義 / 有色女性 / 貧困 / アリス・ベーコン / M・ケアリ・トマス |
研究概要 |
本年度は、個別の研究を各自出進めた。以下で各自の進行状況の概要を述べる。高橋(研究代表者)は、日米の教育における接点をジェンダーの視点から考察し、津田梅子の周辺の事例を「アリス・ベーコンと大山捨松」「M・ケアリ・トマス」という二つの章にまとめ、飯野正子、亀田帛子、高橋裕子編『津田梅子を支えた人びと』有斐閣、2000年に寄稿した。大辻(研究分担者)は、19世紀末から20世紀はじめにかけてのアメリカ福祉国家の萌芽期に成立した母親年金または母子年金の検討にあたって、ジェンダー視角によるアメリカ福祉国家の特徴を整理した。その際、特に今日の福祉改革(1996年福祉「改革」)を従来の福祉国家論者がどのように総括しているのか、新たにどのよう提案がおこなわれているのかに特に着目した。合衆国の場合、貧困率は他の先進資本主義諸国のなかでもっとも高く、これはそのまま女性や子どもの貧困率の深刻さにつながっている。有色の女性世帯主家族の場合は半数以上が貧困にあり、アメリカ社会では伝統的な家族から逸脱する女性は懲罰的に処遇され続けている。これは所得移転によって貧困率の軽減がみられる北欧諸国と対照的である。1960年代末からの女性解放運動はアメリカ合衆国を皮切りに始まったが、女性の性別役割分業という根本的な問題に対するこの社会の反応は予想以上に保守的であることは、特に80年代後半以降の中絶をめぐる保守化の動向、普遍的な児童手当や公的保育制度の欠如などに如実に現れている。1996年の福祉改革は、70年代以降依然として増加し続け、第二労働市場に集中していく傾向の強い貧しいアジア系やヒスパニック系の存在で、その影響は深刻になっている。宮井(研究分担者)は、南北戦争前のアメリカにおけるアボリショニスト(奴隷制廃止運動家)の人種・奴隷制理解が、いかに「身体・アイデンティティ・権力」を結びつけるカテゴリーとしてのジェンダーと絡み合って構築されたかを明らかにすることを目的とし、本年度は、おもに白人女性アボリショニストが子どもたちのために書いた反奴隷制冊子theSlave's Friendや奴隷制廃止運動の機関誌Liberatorの子ども向けコラムなどを分析した。本研究の一部は平成12年6月4日(アメリカ学会)第34回(年次大会)部会A「アメリカにける学校・家族・共同体」において「アボリショニストの『教育』活動と思想:子ども・人種・品性」のタイトルのもと発表を行った。さらに、アメリカにおける「国民」化や「人種」の問題を「白さwhiteness」という範疇を用いて問い直そうとする近年の研究動向を「多文化主義と『白さwhiteness』の可視化」(科研費報告書『英語圏における多文化社会に関しての学際的比較研究:カナダ・アメリカ・イギリス・オーストラリアの多文化主義』代表:宮井勢都子)にまとめた。
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