研究課題/領域番号 |
11610405
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
高橋 裕子 津田塾大学, 学芸学部, 助教授 (70226900)
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研究分担者 |
宮井 勢都子 東洋学園大学, 人文学部, 教授 (10200114)
大辻 千恵子 都留文科大学, 文学部, 教授 (90176941)
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キーワード | アメリカ家族 / 人種観 / 文明 / アンダークラス / 黒人 / ジェンダー / 津田梅子 / アボリショニスト |
研究概要 |
2002年度は本研究の最終年度であるので、これまでそれぞれが本研究で得られた知見をまとめる作業に専念した。高橋は、日米関係の視点から女子留学生派遣の経緯を捉え、日米の女性たちによる高等教育支援のプロジェクトの背景に見えてくる人種観・文明観を検討をした。アメリカ社会史の視点から19世紀後半における家族観、女性のための高等教育観を考察し、これまでリサーチを続けてきた津田梅子の周辺を分析した『津田梅子の社会史』を上梓した。大辻は、なぜ福祉改革法が20世紀も終わりになって成立したのか、女性世帯主家族の貧困はなぜ放置され続けるのか、またこの改革法は、なぜレーガン政権期ではなくクリントン政権期に成立したのか、そしてアメリカ人は貧困をどのようにとらえているのかという問題関心から、アメリカ家族の変化の動向、1970年代から貧困者の行動上および道徳上の欠陥を指す侮蔑語として主要なニュース雑誌や新聞に登場してきた「アンダークラス」という用語、また貧困記事に採用された黒人写真の異常な採用率などに着目して分析をおこなった。その成果を都留文科大学比較文化学科編『記憶の比較文化論-戦争・紛争と国民・ジェンダー・エスニシティ』に所収した。宮井は、南北戦争前のアメリカにおけるアボリショニスト(奴隷制廃止運動家)の人種・奴隷制理解が、いかに「身体・アイデンティティ・権力」を結びつけるカテゴリーとしてのジェンダーと絡み合って構築されたかを明らかにすることを目的とし、本年度もアボリショニストの言説の分析を続けた。奴隷制廃止運動は、奴隷を制度的な奴隷制から解放することをめざす運動であると同時に、どのような資質を備えた人間を「自由」な市民とみなすかを説いた教育活動でもあった。アボリショニストの身体管理に関する認識は南北戦争後の解放奴隷に対する教育にも継承されるが、こうしたアボリショニストの感性は「近代的」な身体を獲得できない他者を差異化する枠組みとしても機能する側面を持つことにもなる。本研究の成果の一部として「子どものための奴隷制廃止運動:雑誌『奴隷の友だち』の分析を中心に-を『東洋学園大学紀要』第11号(平成15年3月)に発表した。
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