本研究の課題は(1)ドイツ商科大学創設の社会史研究、および(2)ディプローム試験合格者の構成分析である。昨年度は後者の基盤となるデータ収集のためケルン商科大学について合計1163名の個人データを収集し、研究成果の一部を『欧文紀要』第4巻に公表したが、今年度は夏期休暇中にミュンヘン工科大学本部において史料調査をおこない、さらに冬期休暇中に調査を続行した。成果の一部は「ミュンヘン商科大学の歴史」(独文)として『欧文紀要』第5巻に公表した。また、このケルンとミュンヘンのデータをライプチヒ商科大学の2035名と比較し、商科大学の試験合格者の地理的分布を分析した。そのさい、とくにオーストリア・ハンガリー帝国のベーメンとハンガリーからきた留学生の構成分析を試み、昨年度はプラハ、今年度はブタペストで研究をおこなった。 ケルン大学アルヒーフにおいては1920年度以降の合格者の特定作業をおこなった。フランクフルト大学に所蔵されている商科大学関係文書についてはながらく閲覧許可はおりなかったが、昨年12月京都ドイツ文化センターにおいて、文部省の招聘により来日したフランクフルト大学事務総長Dr.Buschと懇談する機会があり、ようやく許可を得ることができた。今回の調査はこの偶然の所産である。調査の結果、フランクフルト大学本部に大量の学生文書が存在し、一部は先行機関である商科大学の関係文書であることが判明した。またフランクフルトでは市立歴史研究所において関係文書を調査した。さらにカトリック教徒の実業高等教育志向を考察し、研究成果の一部を公表した。明年度はとくにライプチヒ、フランクフルト、ウィーン、ブタペストにおいて研究を続行する予定である。
|