本研究は、厖大な資料の蓄積をみている窯業生産地について、それぞれの時期を明らかにすることから、その消長を把握し、その全国的な動向から地方制度や地方支配の変化を探ろうとすることを目的とする。そのために、まず各遺跡のデータを集積し、土器編年にもとついて年代決定をおこなった。そして、古代の郡との関係を探るために、まず郡の境界について、近世〜近代の地図と『延喜式』や『和名抄』を手がかりとして復原をおこない、その領域ごとに須恵器生産地の推移を把握できるようにした。 研究成果報告書では、ますこの基礎的な作業の成果として1章を設け、須恵器生産地の動向を全国的な規模で比較できるようにしている。 次に、窯業生産地の推移と地方制度の関係をより詳しく検討するため、地方官衙や地方寺院の消長についでもあわせて検討をおこなった。それらを総合することにより地域社会の変容を捉えようとしたのが、研究成果報告書のII章である。 さらに、生産地の動向の背景にあるものとして、その生産者の性格についても検討をおこなっている。そのために、生産地の展開過程について、郡の中心施設、あるいは式内社の位置も視野に入れて考察することによって、生産の管掌者や従事者について推測をおこなった。この結果については、研究成果報告書のIII章に盛り込んでいる。 以上の通り、本研究の中心的課題である須恵器生産地の消長をもとに、他の地方支配に関わる施設の動向との比較を通して、地域社会の推移を探ることをおこなった。これは厖大な考古資料を読み解き、そこから歴史研究に寄与するための方法を確立するためのステップになるものと考える。
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