本年の研究は、1年次に実施した遺跡分布調査の成果を中心に、印旙沼周辺地域の縄文時代後期の遺跡群の構成について、縄文時代中期からの移り変わりと、後期の地域社会のもつ地域的特性という2点から検討を加え、土器の集中保有(土器塚の形成)や大形竪穴建物址の構築、土偶の保有、鹹水産貝類の搬入などの諸点が、後期の遺跡群の特定遺跡に集中するのではなく、複数の遺跡の分有されることを指摘し、その背景に相互依存的な地域社会の特性を指摘した(阿部ほか2000「縄文後期における遺跡群の成り立ちと地域構造」)。さらに土器塚を形成する遠部台遺跡における発掘調査の成果の一部を、土器集積過程の復元としてモデル化し、その背景に大量の土器の生産と消費があったことを指摘した(阿部2000)。 次に1年次の調査の方法上の成果と課題を確認するために、土壌分析、地下レーダー探査、土器胎土分析、土器型式等の各分析に実績のある研究者を交え、検討会を計画し、その成果をまとめた(「遺跡研究の目的と方法を考える」阿部ほか2000)。 遺跡調査は、千葉県佐倉市遠部台遺跡の土器集積層の発掘調査と同四街道市八木貝塚の貝層部分の小規模な試掘を実施し、前者は土器集積の詳細を復元する資料を発見し、後者は内陸部に東京湾東岸から搬入された貝類が集積する状況を確認し、当初のモデルの妥当性を裏付ける成果を上げることができた。
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