本研究は、遺跡における遺物の集積や離散状況の観察から、縄文時代後期の遺跡で営まれた活動を復元しさらに遺跡をとりまく地域社会の構造的な特質を考察したものである。 本研究ではまず、特定の遺物(土器)が大量に出土する遺跡を取り上げ、その形成過程を解明する目的で発掘調査をおこない縄文土器の遺跡におけるあり方を詳細に検討した。 さらにまた、周辺遺跡の性格と分布状態を検討して、そうした現象がなぜ生じたのかという点を考察した。 これらの研究によって明らかにされたことは、縄文土器や土偶、大形竪穴建物址などの特定の器財や施設が群集する集落群に偏在性をもって認められる事実である。この事実は特定の巨大遺跡にすべての中枢的機能が集中し、その周辺に規模の小さな集落が従属するというあり方とは異なり、複数の機能を相互に補完しあう群構造が想定されてくる。つまり、この時期の地域社会は集落に個々の社会的な行為が分担され、相互に補完することによって一体化した地域社会が形成されたものと推定された。今後は同様のあり方が他地域にも認められるものか、さらにまた、こうした構造の年代的な変遷を解明する必要があるだろう。
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