この研究は、古代東アジアでのガラス生産を、原料、生産用具、製品の側面から総合的に把握することを目的としている。今年度は、古代東アジアにおけるガラス生産関係遺物の出土状況を把握する為に、砲弾形ガラス坩堝および鋳型類を中心に資料収集を行った。それによると砲弾形ガラス坩堝は7世紀から8世紀に及ぶものが、国内では18遺跡・韓国では1遺跡から出土し、時期的には韓国出土例が先行することといずれも鉛ガラスに係わるものであることが判明した。鋳型類のうち、勾玉用鋳型は国内でのみ、弥生時代から古墳時代前期(4世紀)に至るものが15遺跡から出土している。小玉用鋳型は、国内では古墳時代前期(4世紀)から奈良時代(8世紀)に至るものが20遺跡から出土し、韓国では4遺跡が知られ、時期的には砲弾形ガラス坩堝と同様に韓国出土例が先行することが判明した。さらに、国内出土の小玉用鋳型の中で、鋳型そのものを韓国から搬入した可能性のある例を抽出できたことは大きな収穫であった、小玉用鋳型は400年以上にわたって使用されているが、その間、鋳型で作られた玉の規格はほとんど変化しておらず、鋳型で生産された玉の性格を解明する手懸りを得た。以上の分析を通して、日本国内でのガラス生産は、朝鮮半島の強い影響のもとに展開していったことが予測され、その想定のもとに、日本・中国・韓国におけるガラス製品の出土資料の収集及び分析を進めている。
|