平成11年度は、日本国内のほか海外においてもタタキ技法の検討を行った。 大韓民国においては、南部地域を忠清南道・全羅南道から慶尚北道・慶尚南道にわたって調査した。その結果、寛倉里遺跡(高麗大学校・忠南大学校)、南山遺跡(昌原大学校)の各遺跡出土の松菊里式土器にタタキ技法を認めえた。そしてこのタタキ技法が、日本列島の弥生土器と同一のタタキ技法であることを確認することができた。さらに鳥石里遺跡・神衿城遺跡・水石里遺跡出土の松菊里式土器においても、タタキメがみられるとの教示をえた。また粘土帯土器で、金海貝塚(京都大学)以外に、校成里遺跡(国立扶余博物館)出土土器においてタタキ技法を確認したが、さきの松菊里式土器のタタキ技法との間に違いが認められた。今注目されるべき点は、弥生土器のタタキ技法と同類の技法を持った土器の分布が、朝鮮半島において西南部に偏るという見通しをえたことである。 中華人民共和国においては、長期出張の機会に中国各地の土器を調査した。たとえば仙人洞遺跡下層(上海博物館)、大地湾遺跡(甘粛省博物館)・白家村遺跡(中国社会科学院考古研究所)・大塘遺跡(長沙市博物館)など中国大陸においてごく初期に位置づけられるタタキ土器から、漢長安城出土の漢代までの土器である。中国においては、開始期からほとんど縄タタキメであったが、大〓ロ文化に併行する時期には揚子江流域の肖家屋脊遺跡のように平行タタキメが圧倒する地域が確実に存在することを確認した。そして技法的にも弥生土器のそれと共通する要素が多いことから、時間的な問題はあるにしても、東シナ海や黄海の海沿いで朝鮮半島西南部を経由し日本列島に到達するタタキ技法のルートを想定しえるという考えをえるに至った。 なお平成12年1月に東海フォーラムにおいて、成果の一部を口頭発表した。
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