平成12年度は、必要文献の資料化を行う一方で、国内外の土器を詳細に観察する機会をえた。 特に、大韓民国には、8日間(8月3〜10日)滞在して、朝鮮半島南海岸部のほか、西南部の馬韓・百済地域において、遺物の検討を行った。 具体的に列挙すると、東亜大学校博物館・釜山大学校博物館・慶星大学校博物館・国立金海博物館・国立全州博物館・円光大学校博物館・国立光州博物館・国立中央博物館において、遺物の見学を行った。さらに慶南勒島遺跡・全北如意谷遺跡を見学し、合わせて遺物を観察した。その過程で、全北如意洞遺跡や全北益山石泉里遺跡出土の松菊里式土器に平行タタキや無紋タタキの形跡があること、さらに慶南勒島遺跡出土の断面三角形粘土帯土器の体部に棒タタキの形跡があることを確認した。 また申敬〓氏、安星姫氏、李弘鍾氏、崔完奎氏、李宗哲氏、李盛周氏、鄭仁盛氏ほか、多くの韓国の研究者や、武末純一氏、伊藤実氏、高野学氏らと意見交換の機会を持った。その結果、朝鮮半島の土器に対しても、タタキ技法を製作工程・工具・身体技法の三つの観点で充分に追求でき、かつ有効であるという点で、意見の一致をみた。そして弥生土器のタタキ技法と共通する韓国内の類例として、忠南古南里遺跡を追加できるとの教示をえた。また次の点はきわめて重要なのだけれども、楽浪郡のタタキ技法とは、峻別できる可能性が高いことがわかった。 その結果、弥生土器のタタキ技法の波及経路は、楽浪郡とはことなった可能性が、一段と強まった。残る来年度に、この点を、さらに追求したい。
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