本年は、海外調査として大韓民国漢陽大学校博物館において、忠清南道安眠島古南里貝塚出土の松菊里式土器を観察し、土器外面の凹凸が確実にタタキメと判定できるか、検討した。その結果、その凹凸に揺れや振れがないこと、6cm前後で途切れ連続しないこと、円弧状タタキメのパターンを描いていること、から貝殻条痕やハケメなど工具をひきずってつけた痕跡ではなく、タタキ技法による叩き部を器面に圧着してできるタタキメであることを確認した。また国立中央博物館の呉永賛氏、慶南発展研究員歴史文化センターの李盛周氏と、韓国タタキ技法の発展とその起源に関し議論を行うことができた。特に2001年夏に、呉永賛氏は国立中央博物館で開催された『楽浪展』で、土器を担当されたので、楽浪土器の特徴とその分布について最新の貴重なお考えをうかがった。また李盛周氏は、研究のテーマの一つがタタキ技法であったので、朝鮮半島におけるタタキ技法の導入から発展過程に関し、新しい知見をえた。 国内においては、東京大学考古学研究室所蔵の楽浪土城出土土器を観察することができた。また特に近畿地方や九州地方において楽浪土器や三韓土器とされている土器を実際に観察した。そのうちには、原の辻遺跡、三雲遺跡、御床松原遺跡、巻向遺跡などの資料を含む。そして縄タタキが実際にきわめて多くの土器に、かつ様々な器形の土器に活用されている実態みることができた。また同時に多くの弥生土器を観察し、弥生土器と楽浪土器・三韓土器との技法的な差を検討した。
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